中小企業診断士試験の一次試験(企業経営理論)によく出る、マーケティングに関する用語をまとめてみました。(ここに記載した内容以外にも、出題論点はあるので参考までに。)
毎年、数問出題される頻出論点です。
企業経営理論全般に言える話ですが、用語の暗記だけでは解答が難しく、より深い理解が求められます。また、問題文に抽象的な表現が多いので、ある程度の慣れが必要です。
過去問を繰り返し解き、問題文に慣れ、知識の定着と応用力を高めるようにしましょう。
事例Ⅱで、マーケティングの課題が扱われます。
直接用語が問われることはありませんが、マーケティングの知識を前提とした診断・助言を問われます。環境分析などここに記載している内容は、毎年必ずと言っていいほど出題される論点なので要確認です。
マーケティングマネジメントプロセス
P.コトラーは、マーケティングマネジメントプロセスの基本的な流れを以下のように定義している。
- マーケティング環境分析
- マーケティング目標設定
- ターゲットマーケティング
- マーケティングミックス(4P)の実行
1931年〜
アメリカ ノースウェスタン大学大学院教授
近代マーケティングの父と評される。STP理論や著書「マーケティングマネジメント」によるマーケティングの体系化、ソーシャルマーケティング分野の確立など。
「マーケティングは生産物を処分するための技術などではなく、本物の顧客価値を生み出すための活動で、顧客の生活向上を支援する概念でもある」「マーケティングの役割とは、たえず変化する人々のニーズを収益機会に転化することだ」
ちなみに、マーケティングの4Pを最初に提唱したのはエドモンド・ジェローム・マッカーシー。
マーケティング環境分析
マーケティング環境分析として、企業の外部環境と内部環境に対するSWOT分析があげられる。
内部環境 | 外部環境 |
---|---|
強み(Strength) | 機会(Opportunity) |
弱み(Weakness) | 脅威(Threat) |
企業の内部環境と外部環境を4事象に分け分析する方法。2次試験でも頻出。
内部環境分析
企業内部の経営資源となるものに対する分析を行う
- 人的資源
- 財務資源
- 物的資源
- その他(ノウハウ、社風、ブランド力、知的財産権など)
外部環境分析
マクロ的とミクロ的に大別された外部環境に対し、事業拡大につながる機会と、既存事業に対し脅威となる事象を分析する
種別 | 項目例 |
---|---|
マクロ的 | 経済的環境 人口動態的環境 社会文化的環境 技術的環境 政治、法律的環境 自然環境 |
ミクロ的 | 消費者 競争企業 利害関係 産業状況 |
マーケティングリサーチ
マーケティングに必要な情報の収集、分析、評価すること
- 1次データ:マーケティングリサーチにより収集したデータ
- 2次データ:公開されているデータ
調査対象の決め方には、標本調査と全数調査がある。
標本調査 | 母集団から標本を抽出して調査する方法 |
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全数調査 | 母集団全てを調査する方法 |
標本調査を行う場合、標本の抽出方法として以下の方法がある。
有意サンプリング | ある条件に基づいて標本を抽出する。 |
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ランダムサンプリング | 統計的に一定の確率で標本を抽出する。 一般的に標本数は500〜1,000が必要とされる。 |
1次データの収集方法として、以下のようの方法がある。
質問法 | 面接調査:個別面接やグループインタビュー 電話調査:電話での調査 郵送調査:調査票を送付し回答を返送してもらう 留置調査:調査票を送付し担当者が直接回収する インターネット調査:Webページやメール、SNSによる調査 |
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観察法 | 動線調査や競合店調査、交通量調査など |
実験法 | スプリットランテストなど広告の効果測定を行う調査。 |
ターゲットマーケティング
市場を細分化し、細分化された市場の中で最も適切な市場をターゲットとし、効果的なマーケティング手段を講じる方法
STPマーケティング
コトラーが提唱した、マーケティングの代表的な手法の一つ。
「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つの要素に分け分析し、基本的な方向性を定めるもの。
市場細分化
市場細分化(マーケットセグメンテーション)とは、市場を一定の規模に保ちながら、同じニーズを持つ消費者を区分する手法
細分化の基準 | 内容 |
---|---|
ジオグラフィック基準 | 地理的な基準、エリアマーケティングとも呼ばれる 地域、気候、人口密度など |
デモグラフィック基準 | 人口統計的な基準 年齢、性別、所得、職業、学歴、宗教、国籍など |
サイコグラフィック基準 | 消費者の心理的な基準 価値観、ライフスタイルなど |
行動変数基準 | 消費者の製品に対する行動に焦点を当てた基準 知識、態度、使用率、ロイヤルティなど |
ターゲット市場の設定
P.コトラーは、ターゲット市場の設定パターンとして、以下の3つをあげている。
パターン | 内容 |
---|---|
無差別型 | 単一製品を全ての市場に投入 |
差別型 | 細分化された市場ごとに適合した製品を、それぞれの市場に投入 |
集中型 | 細分化された市場の中から特定の市場に限定し、そこに適合した製品を投入 |
エーベルは、ターゲット市場の設定パターンとして、以下の5つをあげている。
- 全市場浸透型
- 単一セグメント集中型
- 製品専門型
- 市場専門型
- 選択的専門型
市場ポジショニング分析
競合製品との差別化を図りいかに優位に立つかを検討すること
自社内でカニバリゼーションを起こさないように注意が必要となる。
カニバリゼーション
企業内において、類似製品間で同一市場を奪い合う現象のこと
マーケティングミックス(4P)の実行
4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、チャネル・物流(Place)、プロモーション(Promotion)のこと
ターゲット市場に対し4Pを投入していく。各4Pに関する意思決定事項として、以下があげられる。
4P | 内容 |
---|---|
Product | 製品の特徴、品質、ブランド、パッケージ、アフターサービス、製品の種類 |
Price | 価格、値下げ、割引 |
Place | 流通経路、流通業者、倉庫、輸送手段、在庫量 |
Promotion | 広告、販売の方法、効果、販売員教育 |
その他マーケティング手法
ソーシャルマーケティング
非営利組織(学校、病院、美術館、政府組織など)を対象にマーケティング手法を適用していこうとするもの
アイディアや社会的主張(環境保護、エイズ予防など)に対し、社会全体の利益を考慮したマーケティングを行う。
サービスマーケティング
無形財であるサービスに対するマーケティングの考え方
無形財の特性
無形財には、無形性、品質の非均一性、不可分性、消滅性、需要の変動性の5つの特性がある。
無形材の特性 | 内容 |
---|---|
無形性 | 形がなく見て触ることができないこと。 サービスの可視化を意識する必要がある。 フィットネスサービスでの、ダイエット前後の比較写真やムキムキの筋肉など |
品質の非均一性 | 同じサービスでも提供者により品質が異なること。 均一性を高める工夫が必要となる。 接客マニュアルや社員教育の実施 自動化の導入 |
不可分性 | 生産と消費が同時に行われること。 一度に複数の消費者に対しサービスを提供できる仕組み作りが必要となる。 |
消滅性 | 在庫という概念がないこと。 需要管理と供給管理を行う必要がある。 需要管理:需要を一定にさせる(時間割引、季節料金) 供給管理:供給効率を高める(パートタイム従業員、セルフサービスの導入) |
需要の変動性 | 需要量が一定でないため、需要管理と供給管理を行う必要がある |
エクスターナルマーケティング
企業と顧客の間で行われるマーケティングのこと
一般的なマーケティングの4Pに対応する。
インターナルマーケティング
企業内の従業員を顧客としてマーケティングし仕事を提供すること
従業員の働きやすさの向上や、離職率の低下を図ることなどがあげられる。
インタラクティブマーケティング
サービス提供者が顧客に対しマーケティングを行うこと
経験価値マーケティング
消費者の経験(五感、喜怒哀楽、思考、行動、交流)を刺激するマーケティング手法
マーケティングの4Pが合理的な方法であるのに対し、経験価値マーケティングは情緒的・主観的な方法となる。
例えば、テーマパーク、高級ブランド、高級自動車などのマーケティングがこれにあたる。
リレーションシップマーケティング
企業と外部(顧客、取引先、投資先、社会)との関係性を重視したマーケティングの概念のこと
短期的ではなく、長期的、継続的な関係の維持を目的とする。
- 製品ライフサイクルが短くなってきているため、自社製品に顧客をとどめることが重要となる。
- 製品の高度化に伴い、メンテナンスなどアフターサービスが重要となる。
ダイレクトマーケティング
製造メーカーが流通業者を介さずに直接消費者に販売する手法
訪問販売や通信販売、インターネットマーケティング、テレマーケティング、テレビショッピングなど、通信販売業界、金融、IT、自動車業界で多く用いられる。
1964年〜
株式会社ALMACREATIONS 代表取締役
日本の経営コンサルタント、ダイレクトマーケティングの第一人者と言われている。著書に「不変のマーケティング」などなど
CRM(Customer Relationship Management)
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客のロイヤリティを向上させる施策を行うマーケティング手法
層別対応
顧客をランク分けしランク毎に異なる対応を行うこと。
例えば、楽天市場の購買頻度、獲得ポイントによる会員ステータス制度などがあげられる。
RFM分析 | 3点で顧客をランク付けし、ランクに応じたサービスを行う。 Recency:最終購買日 Frequency:購買頻度 Monetary:購買金額 |
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FSP | 高頻度で来店する顧客をいくつかの層に分類しサービスを行う。 優良顧客層には個別対応を行う。 |
個別対応
顧客ごとに属性、ニーズ、趣向、購買履歴などに合わせマーケティングを展開すること。
ワントゥワンマーケティングと呼ばれる。対義語として、市場全体に対してマーケティングを展開することをマスマーケティングと呼ぶ。
顧客生涯価値 | 顧客がその企業にもたらす総利益 |
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顧客シェア | 顧客がある製品分野に対し支出する金額のうち、自社に支出した金額の割合 |
アップセル | 顧客に同種のさらに高額商品を勧めること |
クロスセル | 顧客に関連する別の商品を勧めること |
インターネットマーケティング
インターネットマーケティングとして、ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアの3つのトリプルメディアに分類される。
ペイド・メディア
費用を払って広告を載せること
ペイド・メディア | 内容 |
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リスティング広告 | 検索キーワード連動型広告と呼ばれ、検索サイトで検索結果に応じた広告が表示されるもの。 クリック保証型のバナー広告が一般的。 |
バナー広告 | 広告主のページにリンクされた広告画像のネット広告。 ポータルサイトやアフィリエイトサイトへ広告を出稿し、出稿先のサイトに対価を支払う。支払う課金方式には以下のものがある。 クリック保証型:広告がクリックされた回数に応じて課金 インプレッション保証型:広告が表示された回数に応じて課金 成果保証型:広告経由で実際に成約された回数に応じて課金 |
オウンド・メディア
自社で所有するメディアのこと
自社店舗、コーポレートサイト、メールマガジンなど。
オウンド・メディア | 内容 |
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コーポレートサイト | 企業ホームページのこと。会社概要、製品情報、プレスリリースなど。 |
ECサイト | インターネット上のネットショッピングサイトのこと。企業の直営店型と楽天市場のようなショッピングモール型がある。 |
アーンド・メディア
消費者発信のメディアのこと
SNSやブログ、情報共有サイトなど。
アーンド・メディア | 内容 |
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SNS | ネットワークコミュニケーション型のウェブサイト。 Facebook、X、Instagram、LINEなど。 |
ブログ | 主に個人が運営する日記形式のウェブサイト。 |
CGM | 消費者同士で形成する商品やサービスに対する情報共有サイト。 食べログ、yahoo知恵袋など口コミサイトなど。 |
企業や商品がマス媒体に受動的に取り上げられること
関連用語
パレートの法則
全顧客の20%が売上高の80%を占めること
イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見したいわゆる冪乗則のこと。80対20の法則とも呼ばれ、全体の2割が大部分の利益を生み出していて、その2割がいなくなると、残りの8割の中の2割がまた大部分の利益を生み出すというもの。
働きアリの法則と同じ意味合いで、自然現象や社会現象など様々なものに当てはめられる。
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