中小企業診断士試験の一次試験(企業経営理論)によく出る、規模の経済と範囲の経済の違いをまとめてみました。(ここに記載した内容以外にも、出題論点はあるので参考までに。)
毎年、数問出題される頻出論点です。
企業経営理論全般に言える話ですが、用語の暗記だけでは解答が難しく、より深い理解が求められます。また、問題文に抽象的な表現が多いので、ある程度の慣れが必要です。
過去問を繰り返し解き、問題文に慣れ、知識の定着と応用力を高めるようにしましょう。
事例ⅡやⅢで、マーケティング・生産の課題が扱われます。
事例企業の対象が中小企業なので、規模の経済や範囲の経済はあまり扱われないですが、基本的な知識として押さえておく必要はあります。
規模の経済と範囲の経済の違い
どちらもたくさん作って固定費の割合を少なくするコスト削減の話だが、「規模の経済」は同じものを大量生産するのに対し、「範囲の経済」は多様な種類のものを作ることを指す。
規模の経済 | 同じものを大量生産にことより固定費の割合を少なくする。 |
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範囲の経済 | 事業の多角化等で多種多様なものを作ることで固定費の割合を少なくする。 モノ(有形)だけでなく、知識・ノウハウなど人的資源や情報資源も当てはまる。 |
規模の経済
企業の規模や生産量の増大に従い、製品1個当たりの平均コストが逓減すること
同じものを大量生産することで、生産コストへの投資以上の生産量を得られる。
規模の経済が働く業界では、新規参入企業は初期から大量生産する大規模な生産体制が必要で、初期コストが掛かるため大きなリスクとなり、参入障壁となる。
また、規模の経済が働く業界 → 差別化が難しい → 低価格競争 → 規模の経済を求めるという流れになる。規模=シェアの拡大を図るために、合併などによる業界の再編がなされることになる。
規模の経済がはたらきやすい業界として以下のようの特徴があります。
- 固定費の割合が高い
- 市場規模が大きく、需要が安定している
- 製品やサービスの差別化が難しい
例としては、
- 自動車メーカー
- 大手衣料品メーカー
- 半導体メーカ
- ソフトウェア業界
範囲の経済
複数の製品や事業をそれぞれ別の企業が生産提供するより、同一企業で行う方がコスト削減が可能なこと
異なる製品で原材料・生産設備の共有や管理の一元化により、コストを削減できる。事業の多角化のメリットとしてあげられる。
具体的な例としては、
- Amazon:書籍のネット販売→総合ECサイト(物流・販売システムなど社内資産の流用)
- セブン&アイ:小売→メーカ、金融(コンビニ店舗を共有)
シナジー効果
複数の事業を展開することで、Aの事業がBに良い効果をもたらし、Bの事業もAに良い効果をもたらすこと
シナジー効果(相乗効果)の例として、鉄道会社のスーパーマーケットや百貨店経営があげられる。(西武鉄道+西武百貨店、東急電鉄+東急ストアなど)鉄道会社がスーパーや百貨店を運営することで得られるメリットとして
- スーパー、百貨店の利益が得られる
- スーパー、百貨店の利用客が鉄道を利用する(平日の通勤客だけでなく、土日の利用客増が見込める)
同様に、鉄道会社によるレジャー施設の経営や、不動産開発もシナジー効果を狙ったものとなる。
経験曲線効果
累積生産量の増加に従い、単位あたりの生産コストが逓減するとこ
製品の累積生産量が増えるに従い、経験による作業者の熟練、工程や設備の改善により製品1個当たりの生産コストを一定の割合で下げることができる。
規模の経済と引っ掛けでよく出題されることがあります。
「規模の経済」は、ある時(導入期など)に大規模な生産体制を築くことで実現できるため静的なものに対し、「経験曲線効果」は時間軸(累積生産量)に従い実現されるため動的なものです。
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