中小企業診断士試験の1次試験(財務会計)に頻出の、投資のリスク計算とデリバティブ取引に関する用語をまとめてみました。(ここに記載した内容以外にも、出題論点はあるので参考までに。)
毎年、数問出題される頻出論点です。
出題される論点は毎年変化をつけてくるので応用力が問われます。あまり深追いすると時間が掛かるので、まずは基本的な内容を押さえ過去問を繰り返し解き、どのような論点が出題されるか確認し応用力を高めるようにしましょう。
事例Ⅳでは、事例企業の内容とはあまり関係なく用語問題が出題されます。
用語問題が出題されたら、確実に解答するようにしましょう。分からなくても知識をひねり出して何か書きましょう。ここが合否の分かれ道になります。計算問題は難問が多く、解けない受験生が大半です。用語問題の正否が合否を分けることになります。
投資のリターンとリスクの算出
投資のリターン
経済状況別の発生確率と状況別の収益率を掛け合わせた期待値である、「期待収益率」でリターンを計算する
$$期待収益率(%) = \Sigma (状況別の収益率 \times 状況の発生確率)$$
投資のリスク
リスクは収益率のバラツキ(分散、標準偏差)で計算する
$$分散 = \Sigma{ (状況別の収益率-期待収益率)^2 \times 発生確率)}$$
$$標準偏差=\sqrt{分散}$$
リスクの分散
ポートフォリオにおけるリスク分散は、2つの証券がどの方向に動くか(共分散、相関係数)で判断する
$$共分散=\Sigma (A証券の偏差\times B証券の偏差 \times 発生確率)$$
共分散 | 2つの証券の関係 |
---|---|
符号がプラス | 同じ方向に動く |
符号がマイナス | 反対の方向に動く |
絶対値が大きい | 相関性が高い |
$$相関係数(ρ)=\frac{共分散}{A証券の標準偏差 \times B証券の標準偏差}$$
相関係数ρ | 2つの証券の関係 |
---|---|
$$\rho=1$$ | 全く同じ動き →リスク分散にならない |
$$1<\rho<1$$ | 同じ方向に動く |
$$\rho=0$$ | 全く関係なく動く |
$$-1<\rho<0$$ | 別の方向に動く |
$$\rho=-1$$ | 全く別の方向に動く |
ポートフォリオ
複数の証券の組み合わせ。「相関係数が1」とならないような証券を組み合わせることで、リスクの低減をはかる。(ポートフォリオの分散効果)
CAPM(資本資産価格形成)
株式のβ値から、その株式に投資している投資家がどれくらいの収益率を期待するかを関係付けたモデル
証券のリスク
証券のリスクには、証券自体のリスクと市場全体のリスクがある
証券のリスク | 内容 |
---|---|
アンシステマティック・リスク | 証券固有の変動で、分散投資でリスクを軽減できる |
システマティック・リスク | 市場変動に関連して起きる収益率の変動で、分散投資で軽減できない |
ベーター係数
市場のリスクから影響される度合い。
$$\beta=\frac{個別証券と市場ポートフォリオの共分散}{市場ポートフォリオの分散}$$
値が大きいほど、リスクが高くなる。\(\beta=1\)の場合、リターンが市場と同じ動きとなる傾向がある。
式展開すると以下となる。
$$\beta=相関係数\times \frac{個別証券の標準偏差}{市場ポートフォリオの標準偏差}$$
個別証券の期待収益率は、以下の式で算出される。
$$個別証券の期待収益率 =リスクフリーレート + \beta \times (市場ポートフォリオの期待収益率 – リスクフリーレート)$$
市場リスクプレミアム =
市場ポートフォリオの期待収益率 – リスクフリーレート
デリバティブ
債権、株式、通貨などの元となる資産から派生して生まれたもので金融派生商品と呼ばれる
先渡取引
- 金融機関同士、金融機関と顧客間の店頭取引
- 決済日に先渡価格を支払い原物交換を行う
先物取引
- 取引所で取引
- 市場での反対売買による差金決済での取引、現物の受け渡しは行われない
先渡取引と先物取引の違いまとめ
デリバティブ | 取引 | 決済 |
---|---|---|
先渡取引 | 店頭で取引 金融機関同士、金融機関と顧客間 | 決済日の現物交換 |
先物取引 | 取引所で取引 | 現物の受け渡しはない 反対売買、差金決済 決済日以外でも可 |
為替先物予約
- 将来行う通貨売買について、為替レートを金融機関とあらかじめ取り決めておくこと
オプション取引
- 所定の期日に、株式や通貨などの資産をあらかじめ定められた価格(権利行使価格)で買う(売る)ことができる権利のこと
権利の入手にオプション料が掛かるが、相場の変動で権利が不利益になる場合は、権利放棄することでオプション料以上の損失はない。
オプション | 違い |
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コールオプション | 買う権利 |
プットオプション | 売る権利 |
- プロテクティブ・プット
-
原資産の保有と、その原資産のプットオプションの買いを同数量組み合わせる投資戦略
- イン・ザ・マネー
-
オプションを行使する価値があること
- アウト・オブ・マネー
-
オプションを行使する価値がないこと
- アット・ザ・マネー
-
価値が変わらない場合
スワップ取引
スワップ取引 | 内容 |
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金利スワップ | 利息の交換 元本の移動はない |
通貨スワップ | 元本交換を行う |
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