中小企業診断士は、難関の国家資格として知られていますが、どのような資格・仕事内容なのか、どれくらい年収稼げるのか、一般にはあまり認知されていません。
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対する診断・助言を行う専門家として、経済産業大臣が登録する国家資格です。対企業向けの業務がメインとなるので、一般の消費者に直接触れる業務が少ないので認知度は高くありません。
実際に私も中小企業診断士の試験に合格し多くの診断士の方とお会いしました。様々な職業の方が資格を取得しており、とても活躍の場が広い資格と思います。
ここでは、中小企業診断士の仕事内容や年収、どのような人が資格を取得しているのかを解説します。
これから資格取得を目指すという方は、資格取得後の中小企業診断士をイメージしやすいものにしていただければと思います。
中小企業診断士の年収と仕事内容
中小企業診断士の年収
まずは気になる中小企業診断士の年収です。年収に関しては令和3年に中小企業診断士を対象にアンケート調査を行った結果が公表されています。
年収 | 割合 |
---|---|
300万円以内 | 14.3% |
301~400万円 | 8.8% |
401~500万円 | 10.0% |
501~800万円 | 21.4% |
801~1,000万円 | 11.4% |
1,001~1,500万円 | 15.4% |
1,501~2,000万円 | 6.7% |
2,001~2,500万円 | 4.3% |
2,501~3,000万円 | 2.8% |
3,001万円以上 | 4.8% |
501~800万円の割合が21.4%と最も多くなります。また、1,001万円以上の割合を足すと45.5%となり、約半数が1,000万円以上の年収を得ていることが分かります。
年収が高い理由ですが、診断士は一般の企業勤めの方の取得割合が多く、また年齢層も高くなります。それなりの地位の方が多いため高年収になっていると推測されます。
診断士いっぽんで活躍されている方も多くおり、国や企業からの仕事の依頼や講演、執筆などで多く稼いでいる診断士の方も多くいるのは事実です。
中小企業診断士の仕事内容
中小企業診断士には独占業務(公認会計士や弁護士、税理士などその資格がないとできない業務)はありません。
独占業務はありませんが、中小企業診断士は中小企業を対象とした経営コンサルティング(経営戦略、マーケティング、人事、財務、生産、店舗、IT)や補助金の相談、公的機関の窓口相談などなど多岐にわたります。
また、銀行など金融機関に勤めている方が企業内診断士として資格を取得することも多くあります。顧客企業の融資や経営助言などの業務を行うため、知識担保として資格を取得する方が多いようです。
金融機関以外にも、経営やマーケティング、財務など幅広い知識が得られる資格なので、企業内で診断士を取得する人も多いのが特徴です。
中小企業診断協会が令和3年に行った診断士に対するアンケート調査の結果では、中小企業診断士として独立しているのは、全体の47.8%と約半数を占めています。残りの半数は企業内診断士ということになります。
どのような職業・年齢の人が資格を取得しているか
中小企業診断士の職業・年齢層を見てみたいと思います。
中小企業診断士の職業
資格取得者の職業
資格を取得し診断士として活動している人の職業です。
令和3年のアンケート調査によると、診断業務を本業にしている人は、全体の48.3%、企業内診断士が46.4%という結果になっています。
- 診断業務を本業にしている人:プロコン診断士、コンサルティング会社
- 企業内診断士:公務員、公的機関・団体、調査・研究機関、金融機関、民間企業
また、中小企業診断士として独立している人は、全体の47.8%になります。
中小企業診断士は、本業を別に持ちながら資格を取得する人が多いのが特徴ですが、診断業務を本業にしている人と、別に本業を持つ企業内診断士は約半々になります。
企業内診断士の場合、診断業務を副業としている人も多いようです。
受験者の職業
続いて、これから資格を取ろうとしている、診断士の受験者の職業です。
前述の通り、企業内で資格を取る人が多いのが中小企業診断士ですが、試験受験者の勤務先区分の統計が中小企業診断協会に掲載されています。
勤務先 | 申込者数 |
---|---|
経営コンサルタント自営業 | 395 |
税理士・公認会計士等自営業 | 624 |
上記以外の自営業 | 673 |
経営コンサルタント事業所等勤務 | 604 |
民間企業勤務 | 15,112 |
政府系金融機関勤務 | 465 |
政府系以外の金融機関勤務 | 2,194 |
中小企業支援機関 | 566 |
独立行政法人・公益法人等勤務 | 294 |
公務員 | 854 |
研究・教育 | 137 |
学生 | 684 |
その他(無職を含む) | 2,176 |
合計 | 24,778 |
統計を見ると、全受験者数の6割以上が民間企業や金融機関に勤めている人で占めていることが分かります。受験者のほとんどがサラリーマンです。
業務として、顧客企業の融資相談や経営分析を行っている金融機関に勤めている人が多く、経営コンサルタント業務を行っている企業の人が多いです。近年は、経営にITの活用や情報セキュリティの強化は必須となってきているので、システムエンジニアやIT系の企業に勤める人も多い印象です。
私が受けた実務補修のメンバも、全員が中小企業の診断・助言業務とは無関係の企業勤めで、半数がシステムエンジニアでした。
資格取得者の企業内診断士の割合の方が、受験者の割合より少なくなっていることから、資格取得後に独立する人が多くいることが分かります。
中小企業診断士の年齢層・性別
資格取得者の年齢層・性別
50代が31.3%と最も多く、50代以上の人が約7割を占めます。
年齢層が高い理由は、セカンドキャリアとして資格を取得する人が多いことと、診断業務には経営や財務など多くの知識と経験が必要になることが考えられます。
性別の比率は、94.4%が男性となります。近年は女性の診断士も増えてきていますが、全体から見るとまだまだ少数です。
受験者の年齢層・性別
受験者の年齢層を見てみると、30代、40代が最も多くなります。
年齢 | 受験者数 |
---|---|
20歳未満 | 136 |
20~29 | 3,681 |
30~39 | 7,103 |
40~49 | 7,187 |
50~59 | 5,118 |
60~69 | 1,410 |
70歳以上 | 143 |
合計 | 24,778 |
企業内で資格を取る人は、会社の中で業務の幅を広げたいという人の他に、セカンドキャリアとして独立や転職を目指している方も多くいます。企業勤めで培った経験やスキルを活かし、資格取得後に独立するというパターンも多いようです。
また、すでに独立している税理士や公認会計士の人が、業務の幅を広げるため2つ目の資格として取得することも多いようです。
ちなみに、令和4年の1次試験の最年長合格者は82歳、最年少は18歳、2次試験の最年少合格者は16歳とのことでした。尊敬しかないですね。。
受験者の性別を見ると、約1割が女性になります。女性診断士の割合が現在5.2%なので、女性の数は徐々に増えている状況です。
性別 | 受験者数 |
---|---|
男性 | 22,255 |
女性 | 2,523 |
合計 | 24,778 |
中小企業診断士の需要
日本の企業内の99%は中小企業で、小規模企業は9割弱を占め、中小企業で働く従業員数は日本の全従業員数の約7割になります。
日本を支えているのが中小企業になるので、それら中小企業に対する助言・診断を主業務とする診断士の需要は高くなります。
診断士に対するアンケート調査の結果でも、6割の診断士が今後需要が伸びると回答しています。診断士のはだ感覚で需要が増えていると感じているようです。
特に、「事業継承・M&M」「情報化・IT化」「事業再生」「医療・福祉・介護」の分野では今後需要が増えると予想されています。
中小企業診断士になるためには
最後に、中小企業診断士取得までの流れについてです。診断士になるためには国家資格の取得が必要です。
経済学・経済政策、財務会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・政策の7科目のマークシートの試験。
- 7科目の合計得点が6割以上で合格(科目別得点が6割以上で科目合格)
- 科目合格あり(科目免除あり)
- 科目合格は3年間有効
- 1次試験合格は2年間有効
事例企業(組織・人事、マーケティング・流通、生産・技術、財務・会計)に対する診断と助言に関する記述式の試験。
- 合計得点が6割以上で合格
- 科目合格なし
- 1次試験合格から2年間は1次試験免除
2次筆記試験の事例企業に関する質問を口頭で回答する面接試験
- 落ちることはほぼ無い
実企業に対する診断・助言業務を行う。
試験は1次試験と2次試験に分かれ、それぞれ6割以上の得点で合格となります。
診断士試験の内容や難易度、合格率、勉強時間などは別の記事で紹介しますが、1次試験の範囲は7科目もあり覚える内容は膨大、2次試験は筆記試験なので知識の詰め込みだけでは対応できない応用力が問われます。
同年度内にストレートで合格する割合は、4%ほどと言われている難関試験です。何年間も受験しているという人も多くいます。
実際に、私は2次試験合格まで5年間を要しました。
年度 | 結果 |
---|---|
2018年(H30) | 1次試験:不合格(科目合格:経済、経営情報、中小企業経営) |
2019年(R1) | 1次試験:不合格(科目合格:企業経営理論) |
2020年(R2) | コロナ感染で未受験 |
2021年(R3) | 1次試験:合格 2次筆記試験:不合格 |
2022年(R4) | 1次試験:免除 2次筆記試験:合格 2次口述試験:合格 |
1次試験の科目免除の3年と、1次合格の免除期間の2年をフルに活用した形でした。
また、中小企業診断士を名乗るためには、2次試験合格だけではダメで、その後の実務補修を決められた日数受ける必要があります。
実務補修が完了して、はじめて中小企業診断士として登録することができます。
長い道のりになりますが、これから中小企業診断士を目指す方に、私の経験を踏まえ(合格までだいぶ回り道をした方なので試験勉強の経験は豊富?です)、資格取得に向けた勉強のコツや情報を共有させて頂ければと思います。
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